【文芸】at home【本多孝好】

それぞれに事情を抱えてた、歪な4組みの家族を描いた物語。


4つの話からなる短編集なんですけど、どの家族もどこかに問題があったり、事情を抱えたりして、一般的ないわゆる『普通の家族』では無いんだけど、どの話に出てくる登場人物たちも、羨ましいくらいに『家族』で、当たり前の様に享受していた家族という言葉の意味を、改めて問われているように感じましたね。
個人的には一章『at Home』ニ章『日曜日のヤドカリ』が良かったなぁ。


『at Home』
父は空き巣、母は詐欺師、僕は偽装屋。下妹と弟は学生。そんな一風変わった職業についている家族のお話なんだけど、一家団欒の食事中に次のターゲットの話とかしてて、みんあっけらかんとしてる。話の内容と和気あいあいとした家族の雰囲気がミスマッチで面白いんですけど、どうしても、この先良くない事が起きるんだろうなぁという予測がついてどうなるんだろうと思っていたら、やっぱり不足の事態に陥って、というところで見えてくる真実と、血縁とか飛び越えて感じられる家族の強い絆がもうね、あんたら以上の家族はいないよ。と思わせてくれましたね。
エピローグには思わず、にやりとさせられた。


『日曜日のヤドカリ』
9歳の子供がいる女性と結婚した俺。ある日曜日、子供と家でのんびり過ごしていると、「僕のお父さんがきてませんか?」と少年が訪ねてきてーーー
少年が訪ねてきた事によって、ある疑惑が生まれるんですけど、一度家族がバラバラになる事を経験している弥生さんはやっぱり気が気じゃなかったんだろうな。色々あったけど、いい日曜日だったと思える一日で良かった良かった。
あと、主人公と子供の弥生さんの会話がいい感じでした。他人行儀なんだけど、どこか周波数は合っている感じと言いましょうか。十分に素敵な親子ですよあなたたちは。

全体的に、ハッピーエンドというより、グッドエンドって感じでしたね。最後に前を向けるお話はやっぱり大好き。読了感がグッド。
あとはやっぱり、本多孝好さんの文体は好きだという事も大きいのかな。すらすらと流れるように入ってくる。

ただ、僕的にはやっぱり前作の『will』のほうが好きだったりする。

at Home

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