星を追う子ども【新海誠】

ほしのこえ』『雲のむこう約束の場所』『秒速5センチメートル』の新海誠監督の最新作、『星を追う子ども』が今日公開だったので、見てきました。

予告編とかHPくらいの情報量のバレはあります。気になる方はスルーして下さい。


あらすじ

ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。
その唄を忘れられない少女アスナは、地下世界アガルタから来たという少年シュンに出会う。2人は心を通わせるも、少年は突然姿を消してしまう。
「もう一度あの人に会いたい」
そう願うアスナの前にシュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を切望しアガルタを探す教師モリサキが現れる。
そこに開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る―。
(公式サイトより引用)


新海さんの作品はどれも大好きなんですけど、今回の星を追う子供はあまり期待していなかったというか、ファンタジーというジャンル自体にあまり興味が無いので、特に期待せずに新海さんの作品というだけで観に行ったのですが、
まぁ期待しなくて良かったなと思ってしまいました。


正直に言って、面白くなかった。


新海作品の魅力の一つが映像だと思うんですけど、今回も背景はとてもきれいでキャラの動きのシーンも躍動感があって、とても良かった。
けど、それだけというか、あまり引き込まれなかったんですよね。要員は二つあって、一つは、地下世界アガルタがどこかの作品で見たことある光景ばかりだったんですよ。遺跡、着ている服、異形の動物、家、どれも既存のモチーフをつなぎ合わせているだけのような、世界の光景に新鮮さがまるで無かった。見ながら、これ〇〇のオマージュだよね。と言い続けられそうといいますか。
ただ、きれいというだけという印象でした。

二つ目は、僕的に新海さんの映像の魅力は、都市とか町の裏路地とか線路とか、寂しくも美しい光景を切り取るセンスだと思っているんですけど、今回は異世界ファンタジーという事でそういったシーンが殆ど無かったが大きかったです。前半の地上世界のシーンはわりと良かっただけに、残念でした。
だから、話の本編である地下世界アガルタに映像的魅力があまり無かった。


あとは、シナリオ。これが一番ダメ。


巻き込まれる形でアガルタの入り口まで来た主人公の女の子が危険な旅なぜを続けるのか後半まで全然見えてこないんですよね。後半にそれを示しているシーンはあるのですが、ちょっと弱いかなって感じでした。

そういう意味では妻を生き返らせたいと願う教師の方が目的はハッキリはしていたけど、大の大人が、近しい人の死を受け入れられず取り憑かれたように神話や伝説にまですがって生き返りを願うというという状況にリアリティが無いというか、異様とも言える妻への執着を自然な流れであると視聴者に思わせるだけのエピソードが無かった。
だから見ていて、このオッサンなんでそこまでして蘇らせたいんだろうという気持ちになったんですよね。しかも、最後まで気持ちを変えること無く、教え子を犠牲にしてまで蘇らせようとしていて、クライマックスシーンなんて完璧に悪役にしか見えなかった。

あと、言ってしまえば無駄な部分が多い。シンの幼なじみっぽい女の子とか、光を嫌う魔物とか、助けた小さな女の子とか、物語の根幹に関わってくるわけでもなく、出逢ったことによって何かが変わったかといえばそうでも無い。

喪失をまだわからない少女の成長物語なら、もっと違うやり方あったろうし、死と向きあって前を向く話なら、いっそ先生主人公にした方がすっきりしそうだったし、全体的に焦点がぼやけてるというか、これで何を伝えたかったんだろうというのは思いましたね。
なんとなくまとめたっぽい感じで終わった。そんな印象。


あと、新海さん特有の自意識をくすぐられるようなモノローグが無くなっていて残念でした。あれが新海作品の魅力でもあったのに。それこそ、話がぼけた要員の一つかもと思わなくはない。

地上世界にしても、いつの時代なのか、ファンタジーを含んだ世界観なのかがイマイチわからなかった。三輪自動車が走ってるのに、ヘリとか武装した兵士は今風でチグハグ。
ファンタジーモノだからこそ、そういったディテールにはこだわって欲しかったな。
今までも新海さんのそういういい加減な所というのはわりとあったから、らしさといえばらしさなのかもしれませんが……


あと、音楽ですが、基本的に良かったんですけど、大げさというか無駄に壮大な曲がたまにあって、ちょっとうるさかった。天門さんの曲は好きなんですけどね。うーん。


あと、この感想を書くために初めて予告編を見たのですが、この予告編の出来が素晴らしい。すごく本編を見たくなる作り。
むしろ本編見た後でこの予告編見たら、あぁそういう話だったのかとちょっとしたカタルシスを得られたくらい。(おい

新海誠『星を追う子ども』予告編映像 - YouTube


ということで、全体的に褒める部分が少なかった作品で残念でした。
次はファンタジーじゃない作品を期待しています。
とさんざん言ってきましたけど、僕は別にアンチじゃないですよ。一応。
この作品が好きな人は怒らないで、こいつ理解力無いなーくらいに思って下さい。
んで、まぁ楽しめたのは楽しめましたよ(説得力ねぇ……)